【分数の苦手克服 ③】逆数とわり算をすっきり理解
分数は基本をステップ順に理解していけば必ず理解できます。このブログでは、3年生4年生5年生と3段階にわけて分数を解説していますが、教え方の参考にしていただく場合、順番に一気に読めばより深く分数のコンセプトを理解できるでしょう。すべては関係しています。理解があやふやなときは必ず振り返って確認してください。
≫ 【小学三年生の分数】分数のコンセプト/魔法のルール①/分母の同じ分数のたし算と引き算
≫ 【小学四年生の分数】通分/約分/分母の違う分数のたし算と引き算
目次
分数とわり算:魔法のルール②
魔法のルール①を思い出しましょう。
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)は、1つのものを□等分したものが〇個ある、ということでしたね。式で表すと、
1÷□×〇
です。これに対して、\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)にはもう一つの意味があります。
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)は、〇を□等分したもの
式で表すと、
〇÷□
これが魔法のルール②です。
\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)を使って2つのルールを比べてみましょう。
魔法のルール①では、\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)は、1つのものを3等分にしたものが2個。
魔法のルール②では、\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)は、2を3等分にしたもの。
図にしてみましょう。
左右の色がついた部分が、同じ大きさなことがわかりますね。
言葉の使い方は違っても、どちらも同じ分数。しっかり確認しましょう。
魔法のルール②からは、分数がわり算であることもわかります。
\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)→2を3等分したもの→2÷3
つまり、「÷」の前の数字が分子(わられる数)、後の数字が分母(わる数)です。
【練習】
魔法のルール②を使って、わり算は分数に、分数はわり算の式にしてみましょう。
(ヒント:帯分数は仮分数に直して考えます)
(1) 3÷5
(2) 7÷12
(3) 1+2÷5
(4) \(\large\sf{\frac{2}{5}}\)
(5) 2\(\large\sf{\frac{3}{4}}\)
【答え】
(1) \(\large\sf{\frac{3}{5}}\)
(2) \(\large\sf{\frac{7}{12}}\)
(3) 1\(\large\sf{\frac{2}{5}}\)
(4) 2÷5
(5) 11÷4
このように分数の意味の理解は2通りあるのです。このことを意識しておけば、分数のコンセプトは完璧です。
分数のかけ算の考え方・教え方
分数のかけ算はカンタンです。リラックスしましょう。
【分数×整数】
\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×4を考えてみましょう。
\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)が4個ですから、\(\large\sf{\frac{1×4}{3}}\)=\(\large\sf{\frac{4}{3}}\)
分子に整数をかけるだけですね。
【分数×分数】
結論:分数どうしのかけ算は、分母どうし、分子どうしをかける
\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{4}{3}}\)を例に考えてみましょう。
魔法のルール①でいうと、
\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)は、1つのものを3等分したものが1個。
\(\large\sf{\frac{3}{4}}\)は、1つのものを4等分したものが3個。
図にしてみましょう。
まず、\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)は左の円の色のついた部分です。これをさらに4等分したものが3個分ですから、真ん中の円になりますね。
これは、最初の1つの円から考えると、12等分したものが3個分(右の円)です。
\(\large\sf{\frac{1×3}{3×4}}\)=\(\large\sf{\frac{3}{12}}\)になっていますね。
【練習】次の分数のかけ算をしましょう。
(1) \(\large\sf{\frac{2}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{4}{5}}\)
(2) \(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{2}{7}}\)
(3) \(\large\sf{\frac{2}{4}}\)×\(\large\sf{\frac{3}{11}}\)
(4) 1\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)
(5) \(\large\sf{\frac{2}{5}}\)×2\(\large\sf{\frac{4}{9}}\)
【答え】
(1) \(\large\sf{\frac{2}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{4}{5}}\)=\(\large\sf{\frac{2×4}{3×5}}\)=\(\large\sf{\frac{8}{15}}\)
(2) \(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{2}{7}}\)=\(\large\sf{\frac{1×2}{3×7}}\)=\(\large\sf{\frac{2}{21}}\)
(3) \(\large\sf{\frac{2}{4}}\)×\(\large\sf{\frac{3}{11}}\)=\(\large\sf{\frac{2×3}{4×11}}\)=\(\large\sf{\frac{6}{44}}\)=\(\large\sf{\frac{3}{22}}\)
(4) 1\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)=\(\large\sf{\frac{4×2}{3×3}}\)=\(\large\sf{\frac{8}{9}}\)
(5) \(\large\sf{\frac{2}{5}}\)×2\(\large\sf{\frac{4}{9}}\)=\(\large\sf{\frac{2×22}{5×9}}\)=\(\large\sf{\frac{44}{45}}\)
最後に約分するのを忘れないようにしましょう。
おもしろルール③ 逆数
分数の最後のおもしろルールです。
分母と分子をひっくり返した分数どうしをかけ算してみます。
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)×\(\large\sf{\frac{□}{〇}}\)
すると、約分できるので、必ず1になります。
このとき、\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)と\(\large\sf{\frac{□}{〇}}\)をお互いの「逆数」と言います。
逆数とは、かけ合わせると1になる分数のことです。
【練習】次の分数や整数の逆数を求めましょう。
ヒント:整数は分母が1の分数と考えます。
(1) \(\large\sf{\frac{4}{5}}\) (2) \(\large\sf{\frac{2}{7}}\) (3) 2
(4) \(\large\sf{\frac{1}{7}}\) (5) 1\(\large\sf{\frac{1}{5}}\)
【答え】
(1) \(\large\sf{\frac{5}{4}}\) (2) \(\large\sf{\frac{7}{2}}\) (3) \(\large\sf{\frac{1}{2}}\) (4) 7 (5) \(\large\sf{\frac{5}{6}}\)
逆数は、分数のわり算を考える重要な考え方ですので、しっかり覚えましょう。
分数のわり算、目からウロコの教え方
結論:分数のわり算は、分母と分子をひっくりかえした分数(逆数)のかけ算と同じ。
では、なぜそうなるのか、2つのポイントだけでわかりやすく説明します。
小学2年生のわり算の基本にもどってみましょう。わり算とは?
【ポイント①】 わり算 〇÷□の意味は、〇の中に□が何個あるか
でしたね。わる数が分数でも同じです。
1÷\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)は、1の中に\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)が何個あるか。
図にしてみましょう。
1つの中に\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)は、3個ありますね。\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)は1つのものを3等分したものが1個分なのですから。
1÷\(\large\sf{\frac{1}{〇}}\)=〇
というわけです。
【ポイント②】 割る分数を2ステップにわける
1÷\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)のように、割る分数の分子が1でないときを考えてみましょう。
わる分数を分子と分母に分けます。
\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)=\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)×2 (魔法のルール①:\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)は1つのものを3等分したものが2個)
ですので、1÷\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)は、1を\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)で割ってから2で割るという2ステップに分けられます。
1÷\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)÷2
最初のステップ:ポイント①より
1÷\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)=3
2番目のステップ:魔法のルール②より
3÷2=\(\large\sf{\frac{3}{2}}\)=1×\(\large\sf{\frac{3}{2}}\)
結局、1÷\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)=1×\(\large\sf{\frac{3}{2}}\)になりましたね。
分数のわり算の方法自体は、逆数にしてかけるだけですから簡単です。
ポイント①と②を理解すれば「分数のわり算はひっくりかえしてかける」理由もわかりますね。
まとめ
分数の魔法のルール①:
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)→1つのものを□等分したものが〇個。
分数の魔法のルール②:
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)→〇を□等分したもの。
分数のおもしろルール①:
\(\large\sf{\frac{□}{□}}\)=1→分母と分子が同じ分数は、1。
分数のおもしろルール②:
\(\large\sf{\frac{□×△}{〇×△}}\)=\(\large\sf{\frac{□}{〇}}\)→分母と分子に同じ数をかけても分数の意味はかわらない。
分数のおもしろルール③:
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)×\(\large\sf{\frac{□}{〇}}\)=1→かけたときに1になる分数どうしを「逆数」といい、分母と分子をひっくり返したもの。
この5つのルールが、すべての分数のたし算、引き算、かけ算、わり算、通分、約分の基礎になっています。
ついに分数のすべてを学び終わりましたね。それでも文章題などにぶつかったときに、迷う事があるかもしれません。もしまだ不安があるときは、難しい問題には今は手を出さない。捨てる勇気が大切です。出来ることからステップを進めて自信をつけることが、必ず高い学力につながります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
≫【分数の苦手克服 ①】分数を苦手にしない最初の教え方:分数のコンセプト/魔法のルール①/分母の同じ分数のたし算と引き算
≫ 【分数の苦手克服 ②】分数の難所、通分を攻略:通分/約分/分母の違う分数のたし算と引き算