ニュートン算はむずかしくない【受験算数】
ニュートン算が苦手という小学生はとても多いと思います。苦手な理由は、問題の中でふたつのことが同時に起こっているから。きちんと整理すれば、同時に起こっていることもひとつにできます。文章題であることも苦手の理由のひとつですが、本質を理解すれば問題の趣旨はすべて同じ。わからないのではありません、慣れていないだけ。
目次
ニュートン算「ではない」問題をとくらべてみる
【ニュートン算ではない問題】
120人の行列があります。1つの入り口で1分に2人入場させることができます。
行列がなくなるのに何分かかりますか。
これはわかりますね。
120÷2=60(分)
【ニュートン算の場合】
120人の行列があります。さらに1分に1人ずつ行列が増えていきます。1つの入り口で1分に2人入場させることができます。行列がなくなるのに何分かかりますか。
ニュートン算とは、行列が減っていくだけの問題と違って、減りながら同時に増える問題のことをいいます。2つのことが同時に起こるので難しいと思われていますが、実はそうでもありません。
記号にしてみましょう。
△:増える量(単位時間あたり)
□:減らす量(単位時間あたり/単位個数あたり)
〇:はじめの量
「単位時間」と「単位個数」を理解しておきましょう
「単位時間」というのは、問題の中で扱われている時間の単位のこと。1時間、1分、1秒、1週間などです。
「単位個数」というのは、増えたり減ったりするカギになるもの1つ分。1人、入り口1つ、牛1頭、蛇口1個などです。
上の問題では、単位時間は1分、単位個数は入り口1つのことです。
ニュートン算を解くための唯一のコンセプト
単位時間、単位個数を△や□をしっかりとらえることがポイントです。
さて、ニュートン算「ではない」問題は、同時に増える量△がないので、
〇÷□=T(なくなるまでの時間)
カンタンでした。ニュートン算だと、減ると同時に増える分があるので、
単位時間あたりに減る量は、
□→□-△
となるので、式が下記のようになります。
〇÷(□-△)=T(なくなるまでの時間)
ニュートン算のコンセプトはなんとこれだけです。
減る単位個数が増えると、たとえば入口☆こ、☆台、☆人のようになると、
減る量も☆倍になりますから、
〇÷(□×☆-△)=T(なくなるまでの時間)
となります。
すべての問題は、この〇、△、□、☆のうちわかっていない数字が含まれています。コンセプトを理解し、この図をイメージできるようにさえしていればすべてのニュートン算を解くことができます。次を読む前にここまではしっかり理解しておきましょう。
はじめの量〇や増えていく量△がわかっている問題で、ニュートン算に慣れましょう。
【基本問題(1)】
120人の行列があります。さらに1分に1人行列が増えていきます。1つの入り口で1分に2人入場させることができます。行列がなくなるのに何分かかりますか。
〇=120
△=1
□=2
ですから、
〇÷(□-△)=120÷(2-1)=120(分)とわかります。
【基本問題(2)】
120人の行列があります。さらに1分に1人行列が増えていきます。1つの入り口から入場させたところ行列がなくなるのに30分かかりました。1つの入り口で1分に何人を入場させることができますか。
〇=120
△=1
□=わからない
なくなるまでの時間T=30
〇÷(□-△)=120÷(□-1)=30を解いていくと、
□-1=120÷30
□=5(人)とわかります。
【基本問題(3)】
120人の行列があります。さらに1分に1人行列が増えていきます。2つの入り口から入場させたところ行列がなくなるのに24分かかりました。1つの入り口で1分に何人を入場させることができますか。
〇=120
△=1
□=わからない
☆=2
なくなるまでの時間T=24
〇÷(☆×□-△)=120÷(2×□-1)=24
これを解いていくと、
2×□-1=120÷24
□=3(人)とわかります。
このように、文章問題でも何が図の〇、△、□、☆のどこに当てはまるかを理解していれば、どの数字を聞かれていても解けるのです。
あらゆる問題に対応するための大切な一手間(重要)
実はニュートン算の受験問題は、ニュートン算を解く前にひと手間必要なことがほとんどです。ニュートン算を解くのに必要な数字を与えられていないときです。こういうときは、まず「仕事の総量」を出す手順をいれれば解くことができます。
何人かの行列があります。さらに1分に何人か行列が増えていきます。4つの入り口から入場させたところ行列がなくなるのに15分かかりました。8つの入り口から入場させたところ行列がなくなるのに7分かかりました。いくつの入り口があったら3分ですべての行列を入場させることができますか。
整理しましょう。
〇(はじめの量)=わからない
△(単位時間あたりに増える量)=わからない
□(単位時間あたりに単位個数1で減る量)=わからない
☆(個数)=4のとき、T=15…条件①
☆(個数)=8のとき、T=7…条件②
「仕事の総量」を考えてみましょう。仕事の総量は(1)(2)2つのやり方で出すことがポイントです。
(1) 入り口に並んだ総人数(仕事の総量)
(2) 入り口から入場した総人数(仕事の総量)
行列がなくなるとき(1)と(2)は同じになるはずです。
(1) (2)の仕事の総量を式で表しましょう。
(1) 〇+△×T
(2) □×☆×T
(1)=(2)です。
〇+△×15=□×4×15…条件①より
〇+△×7=□×8×7…条件②より
式をそのまま2つの線分図にしましょう。線分図の上に右辺の情報を書いて、下に左辺の情報を書きこむとわかりやすいです。
ここからは線分図から読み取れる図の部分を利用します。
□×4=△×8
□=△×2…(わかったこと1)
また条件①にあてはめると、
〇=□×60-△×15
=△×120-△×15
=△×105…(わかったこと2)
〇と□と△の関係がわかりました。
あとは求められているTは3分ですから、
ニュートン算のしくみより、
〇÷(□×☆-△)=3
〇と□は△で置き換えられるのであとは計算して☆を求めます。
△×105÷(△×2×☆-△)=3
35×△=△×2×☆-△
18×△=△×☆
☆=18(入口の個数)
ニュートン算の問題のパターンはこれだけ。応用問題では何段階かで条件が組み合わさることがありますがこの基本を身につけていれば大丈夫。
いろいろな文章題をやって慣れることが大切です。その中で、水とポンプ・草と草食動物・行列とチケット売り場・駐車場と入場ゲートなど扱うものは変わっても、はじめの量、増える量、減っていく量、個数、なくなるまでの時間を整理すればすべて同じ問題です。旅人算、仕事算も、ニュートン算の仲間です。
「水とポンプ」のニュートン算でよく出る変則の問題
普通のニュートン算は、
増える量△<減る量□(単位当たり)
です。そうでないと、永遠にはじめの量がなくなることはありませんね。この変則問題では、
増える量△>減る量□
になっています。また、
はじめの量がなくなるまでの時間ではなく、空のものがいっぱいになるまでの時間
を考えます。実際に見てみましょう。
【問題】
穴のあいた空の水そうがあります。水を毎分30Lずつ入れると48分、毎分40Lずつ入れると32分で水そうがいっぱいになります。
(1)水は毎分何 ずつ水そうから出ていますか。
(2)ちょうど20分で水そうをいっぱいにするには、毎分何Lの水をいれておけばよいですか。
〇ははじめの量でなく、いっぱいになったときの量(終わりの量)です。
Tはなくなるまでの時間でなく、いっぱいになるまでの時間として考えます。
もし、この水そうに穴がなければ簡単ですね。
〇÷△=T(いっぱいになるまでの量)
実際は毎分□L減っていきますので、
〇÷(△-□)=Tとなります。
普通のニュートン算と△と□がさかさまになっているだけです。
総量を考える時も同じように、△と□がさかさまになります。
総量(1):△×☆×T
総量(2):〇+□×T
この問題を整理すると、
△=30Lのとき、T=48…条件①
△=40Lのとき、T=32…条件②
□=わからない
☆=1
条件①②の時の総量を求めましょう。
30×48=〇+□×48…条件①
40×32=〇+□×32…条件②
このまま線分図で解いてもいいのですが、今回は式のまま消去法で解いてみましょう。
条件①-条件②
1440-1280=□×16
□=10(L)…(1)の答え
条件①にいれると、
1440=〇+10×48
〇=960なので、ニュートン算の考え方から、
960÷(△-10)=20
△=58(L)…(2)の答え
なぜニュートン算というの?
ニュートンが書いた数学の講義ノートに記載されていた問題が、増えることと減ることが同時に起こるニュートン算の形だったのでこのように名付けられました。有名な万有引力の法則や重力とは関係ないようです。
まとめ
ニュートン算に代表されるように、旅人算、仕事算では二つのことが同時に動くので苦手に思うのは当然です。そこで算数自体に苦手意識をもってしまわないように単位個数や単位時間を使いながら動きのない形に変えて理解させてあげるのがポイントです。教える側に一貫性がないと子供は混乱してしまいます。これらの単元が関連していることを念頭に教えることで理解も楽になり深まります。
最後までお読みいただきありがとうございました。