食塩水の問題の苦手意識は、図で克服する
食塩水の問題とは、食塩を水に溶かしてできた食塩水を
①食塩水の重さ(g)
②食塩の重さ(g)
③濃度(%)
の3つの数字で表すものです。いろいろな条件で、①②③のどれかを求めます。
学校の算数を理解するにはまずT字の解法がすらすらできればコンセプトはしっかり身につきます。中学受験の複雑な問題は、面積図、てんびん算までマスターしましょう。
目次
食塩水のしくみを理解する
① 食塩水の重さ、②食塩の重さ、③濃度には、図のような関係があります。
そう、速さや仕事算などで出てくるT字の公式ですね。
食塩水は食塩を溶かさないイメージの方が混乱しません。式で書くと、
式を3つ覚える必要はありません。かけ算がはいっている
食塩の重さ=食塩水の重さ×濃度(★必須)
だけを覚えれば形を変えるだけです。
T字を理解しておきましょう。
【注意しておきたいポイント】
食塩水は、食塩+水であること。
「しょくえんすい」ではなく「しょくえんとすい」と呼ぶといいです。
つまり、
→食塩の重さが増えたら、食塩水の重さも増えることを忘れずに。
→蒸発の意味は、食塩の重さは変わらず、食塩水の水の重さが減ること。
食塩水の問題は、基本的に混ぜ合わせる、蒸発させるときにどうなるか、なのです。
実際の問題でみてみましょう。
攻略1:T字を使いたおす
【混ぜる問題】
問題:8%の濃度の食塩水A200gに、濃度のわからない食塩水Bを加えたところ、11%の食塩水300gができました。食塩水Bの濃度を求めましょう。
問題の中にある情報をT字で表します。
食塩水の重さと食塩の重さはそのままたし算やひき算ができます。
Bの食塩水の重さが300-200=100g
Aの食塩の重さは公式より、200×0.08=16g
できた食塩水の重さも同じく、300+×0.11=33g
(濃度が%の表示のときは100で割った数字で計算しましょう)
できた食塩水の食塩の重さとAの食塩の重さをみると、Bの食塩の重さがわかります。
33-16=17g
公式からBの濃度は、
17÷100×100=17%
蒸発の問題でT字を練習しましょう。
【蒸発の問題】
蒸発の問題:3%の食塩水150gから水を60g蒸発させると、濃度は何%になりますか。
「蒸発」とは、濃度0%の食塩水(=水)を引くことです。
できた食塩水の重さ150-60=90g
公式からAの食塩の重さ150×0.03=4.5g
できた食塩水の食塩の重さ4.5-0=4.5g
公式から4.5÷90×100=5%
→水は、濃度0%
→食塩のみは、濃度100%
であることに注意しておきましょう。次に水を加える問題です。
【水を加える問題】
水を加える問題:15%の食塩水600gの一部をこぼしたので、こぼしたのと同じ重さの水を加えたら、濃度が8%になりました。こぼした食塩水が何gですか。
よく出るのは、こぼした残りの食塩水に同じ重さの水を加える問題です。
こぼした食塩水の重さを□とすると、こぼした残りの食塩水の重さは600-□g、できた食塩水の重さは元どおりの600gです。
水を加えても、食塩の重さは変わりません!
こぼした残りの食塩水の食塩の重さも48g
できた食塩水の食塩の重さ600×0.08=48g
公式からこぼした残りの食塩水の重さ48÷0.15=320g
加えた水の重さ600-320=280g
【食塩を加える問題】
食塩を加える問題:16%の食塩水200gに、食塩をある量だけ加えたら、濃度が20%になりました。加えた食塩は何gですか。
ここで登場するのは、「水のT」です。
食塩水に対する食塩の濃度(割合)ではなく、水の濃度(割合)で考えます。
え?と思うかもしれませんが、食塩水の本質がわかっていれば簡単。
食塩水=食塩+水
食塩水100%=食塩の濃度%+水の濃度(割合)%
つまり、
水の濃度(割合)とは、
100%-食塩水の濃度(%)なのです。
水のTはこのようになります。
この問題では、16%の食塩水の中の水の割合は、
100-16=84%
できあがった食塩水の水の割合は、
100-20=80%
水のTでみてみましょう。
食塩が加わっても、水の量は変わらないですね。
できた食塩水の量は、
168÷0.8=210g
と分かるので、増えた分が食塩の量となりますね。
210-210=10g…加えた食塩
小学校で出る食塩水はここまで身につけていれば大丈夫です。
攻略2:面積図で食塩水を表す
T字で解いた問題を面積図で解いてみましょう。
問題:8%の濃度の食塩水A200gに、濃度のわからない食塩水Bを加えたところ、11%の食塩水300gができました。食塩水Bの濃度を求めましょう。
面積図で表すときは、
長方形の底辺→食塩水の重さ
高さ→濃度
であることをマスターすればOKです。
いれものっぽいので、面積を「食塩水の重さ」と勘違いしないように。
AとBの食塩水の情報を面積図にしてみましょう。濃度の低い食塩水を左に書くクセをつけておくと良いです。
AとBの食塩水をまぜてできたのが青い枠の食塩水です。
</h4
AとBを合計した面積と青枠の面積は同じ→AとBの長方形の凸凹を「ならす」ので、凸凹は同じ面積になるはずですね。
凸凹部分の2つの長方形の底辺と高さをみてみましょう。
左の長方形の高さ11-8=3(%)
左の長方形の面積200×3=600
右の長方形の面積も600なので、
右の長方形の高さ600÷100=6(%)
求めたいのはBの濃度なので、11+6=17%
慣れてくればいちいち長方形の面積を出す必要はありません。面積が同じとわかっているので、
底辺の比と高さの比は逆比
→食塩水の重さと高さの比は逆比
高さの比=AとBの濃度の比ではありませんので、あせらずに注意して答えを出しましょう。
面積図で解くときは、比を使うので濃度(%)を100で割って計算する必要はありません。
%の数字のまま考えられるので楽ですね。
攻略3:てんびん算は理科のセンスで簡単になる
重さがAとBの2つの食塩水をてんびんの重りとしましょう。理科のてんびんと同じように考えましょう。
食塩水の重さの比がA:Bなので、てんびんは逆比のB:Aのところで釣り合いますね。そこが混ぜた食塩水の濃度です。食塩水Aの濃度a%とBの濃度b%がそれぞれてんびんの端になります。
てんびん算、それだけです。慣れてしまえば簡単。さきほどの問題を解いてみましょう。
問題:8%の濃度の食塩水A200gに、濃度のわからない食塩水Bを加えたところ、11%の食塩水300gができました。食塩水Bの濃度を求めましょう。
食塩水の重さを重りにして、てんびんを釣り合わせます。食塩水の重さの比は、2:1ですので、釣り合うのは逆比の1:2のポイントですね。
てんびんの直線の比に注目して濃度を求めます。
比の①が3%ですので、比の②は6%。
求めるBの濃度は、11+6=17%
面積図もてんびん算も、理解できても使いこなせなければ意味はありません。
まずはどちらかひとつを練習して自分のものにしましょう。
両方使えれば問題によってやりやすい方を選ぶことができます。
てんびん算は、比で考えればいいので問題によっては時間の節約ができます。
まとめ
食塩水の基本の考え方は、T字を使いこなせればそれで充分です。中学受験の問題で条件が複雑になると、面積図を使わないと複雑すぎて解けない問題も出てきます。
受験をするお子様はT字はマスト、面積図かてんびん算のいずれかひとつは理解しておきましょう。お子様の理解のしやすさで選べばOK。両方使えると、もちろんいいのですが、無理は禁物です。
食塩水の問題は理科のセンスにもつながる面白い単元。得意単元にしておくと世界が広がりますね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
<算数が苦手になりがちな単元に関するブログ>
2進法、3進法…N進法、受験算数のわかりやすい教え方
つるかめ算は日常の中で鍛えよう【受験算数】
ニュートン算はむずかしくない【受験算数】