イギリスと日本の算数学習の違い!
昨年、算数教育の権威ノッティンガム大学のウェイク教授、バーミンガム市にあるアストン大学の数学科のジェネラシス教授とお話しする機会をいただきました。驚いたのが、イギリスの算数教育と日本の違い。
目次
イギリスの学校には教科書がない(?!)
イギリス政府は5, 6~15, 16才の算数教育の基準を4つに分けて到達目標をそれぞれ1~4のKey Stageとして掲げています。内容は、算数の基礎の基礎。ですが私立にも公立にも!?その目標に到達するために使用する「教科書が決められてない」のです💦つまり教材は学校、現実的には先生の肩にかかってくるわけですが、実際にも教科書を使わないことがほとんどでパラパラとプリントが渡される。宿題もまったくないか微々たるもの。自由もいいところですが、算数にはとりわけ大切な反復学習をしないので、理解した子でも定着しません。
先生自身が満足に指導を学ぶシステムがない(?!)
そもそも先生達が学べない?!指導のスキルを磨くためには先生達は、自己研鑽をしなければなりませんが…フォーラムなどはほとんどが有料。よほどやる気がないとスキルアップもできません。つまり学校で安心して子供の算数学習おまかせできる環境に出会うのは、宝くじに当たるようなラッキーなこと…(涙)。
日本から来たお母様方によれば、学校で算数の何を習っているのかわからない…ノートも学校に置きっぱなし、もはや我が子を信じるしかない…と不安なご心中。実際英国のトップの私立で上位にいても、日本の公立に戻ったら算数の問題が解けない…というのがリアルなレベル感ということなのです。
世界のどこでも義務教育の間は同じ教科書が手に入る日本、週末には山のごとく塾の宿題が待っている学習風景からは、想像を超えていますね。
前向きにとらえれば「自由」→「子供の自主性にまかせる!」ともいえますが、「まかせる」のと「尊重する」のは雲と泥ほどの違いがあるように思います。実際、イングランドのNational curriculumは自由がゆえの不公正を是正するためにできたそうですが、外務省の方によると、政権が短期間で何回か代わったためにシステマティックな教育制度が確立できなかったそうです。
日本の算数教育は、世界5位。イギリスはなんと26位。
OECD(経済協力開発機構)において世界の生徒の学習到達度調査(PISA)というものが3年に一度実施されます。これによると、イギリスはなんと26位に対して、日本は世界の5位に位置しています。さて、では日本の算数教育を世界の水準で振り返ってみましょう。まず内容とシラバスのレベルは圧倒的に日本に軍配があがるでしょう。義務教育が一定レベルの学習を提供するのもちろんですが、「受験算数」には思考力を鍛えるコンセプトがそろっています。各種のテスト対策でプラクティスもし放題。しかも良し悪しはともかく、たいていの進学塾のシラバスでは小学校分の学習を5年生のうちに終えてしまいます(4年で終えるという塾もありますが、実質的に受験対応には5年生までかかります)。
お二人の教授にYEAHの英語版の教材の4年生の必修問題(essential questions)をお見せしたところ、これを9才の子が解けるわけがない!と信じてもらえませんでした笑
正直、イギリスで上位の学校に行くための登竜門である11+、その後のGCSEやAレベルの試験なども、日本の、特に受験算数で脳を鍛えておけば、「楽勝」です。
教材よりカリキュラムより、指導の力。
それでも、日本の教育文化の中で、受験だけをゴールにした「合格のノウハウ」主体の指導が当たり前になりつつあるのは事実。どんなに教材やカリキュラムが素晴らしくても、集団授業で理解できない内容を合格のためにパターンの暗記でこなそうとすると、脳トレが出来ずじまいで、中学生になったらスッカラカンに忘れます。
塾のレベル分けや、偏差値、合格へのプレッシャーが学習意欲へのトラウマになる子もいます。
ちなみに、英国はもちろんヨーロッパでは日本よりもずっとモンテッソーリ教育が根付いています。モンテッソーリはたしかに「子供の自主性」を最優先にして「個々の力を引き出す」教育です。元来モンテッソーリは、障害のある子供たちの学力をあげることから教育法への探究をはじめました。真に多様な子供たちの力を、確実に伸ばす方法を模索したのです。なので小学生向けのモンテッソーリ教育の指導者は、コンセプトに基づいて細かく決められたむしろ不自由な(笑)指導法を学ばなければなりません。それだけ子供の個性に応じて「力を引き出す」ということは簡単ではないことなのです。
子供の自主性を「尊重」して可能性を伸ばす指導者の力が必要です。
教育で個人的にイギリスに軍配をあげるとすると、階級社会であるせいかキャリア教育では早い年齢のうちに「仕事」というものを意識させる文化があるように思いました。自分が将来なりたい職業という視点だけでなく、社会を成り立たせるための現場の様々な仕事、配管工から医師、webデザイナー…etc.を小・中学生に紹介するバーミンガム市でのイベントは大迫力でした。
ジェネラリス教授、ウェイク教授とは、YEAHの英語版の算数教材でイギリスの算数ステータスをあげよう!と夢を語りあいました。日本の算数教育の素晴らしさを世界に!そして日本の算数教育の価値は教材だけではないことを、YEAHが伝えていきます!