【分数の苦手克服 ①】分数を苦手にさせない最初の教え方
分数にはいくつかの説明の仕方があります。本質は同じなのですが、いろいろな考え方がまざると混乱して苦手意識を持つ子どもたちがたくさんいます。ここでは分数のコンセプトを「魔法のルール」としてブラさないようにして解説しています。はじめて分数を学ぶお子さんに教える方が対象です。実際に教えるときは、練習を増やしてお子さんの理解を確認しましょう。
≫ 【分数の苦手克服 ②】帯分数と仮分数/通分と約分/分母の違う分数のたし算と引き算
≫ 【分数の苦手克服 ③】 魔法のルール②/逆数/分数のかけ算とわり算
目次
分数とは何かを「言葉」で理解する:魔法のルール①
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)という分数を考えてみましょう。
読み方は、□分の〇。棒の下にある数字を「分母(ぶんぼ)」、上にある数字を「分子(ぶんし)」と呼びます。分数のお母さんが、子どもをおんぶしていると考えると、上と下の言葉を間違えないですね。(ちなみに英語では、\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)はone thirdsのように分子を先に読みます。帰国子女のお子さんなど英語と日本語と両方で分数に接するときは違いを意識していると混乱しません)
それでは、分数\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)の意味を理解しましょう。
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}\)とは、1つのものを□等分にしたものが、〇個あること。(魔法のルール①)
「等分(とうぶん)の意味は、「等しく分ける」です。同じ大きさに分けること。等しく分けられた数なので、「分数」と呼ぶのです。
【練習】次の分数を魔法のルール①に変えてみましょう。
\(\Large\sf{\frac{1}{2}, \frac{2}{4}, \frac{1}{3}, \frac{5}{6}}\)
【答え】
1つのものを2等分にしたものが1個。
1つのものを4等分にしたものが2個。
1つのものを3等分にしたものが1個。
1つのものを6等分にしたものが5個。
下の左の2つの図のように、1つの円の\(\large\sf{\frac{1}{2}}\)と\(\large\sf{\frac{2}{4}}\)の大きさは同じですね。それでも分数の意味として考えるときは、
\(\large\sf{\frac{1}{2}}\):1つのものを2等分したものが1個、\(\large\sf{\frac{2}{4}}\):1つのものを4等分したものが2個
となります。
分数とは何かを「式」で理解する
1つのものを、□に等しく分けた(÷□)、〇個分(×〇)ですから、これを式に表してみると、
\(\large\sf{\frac{〇}{□}}=1÷□×〇\)
となります。1つのものの”1”を、上の図では1つの円で考えましたが、□でも△でもリボンでもなんでもよいのです。ですが、大きさの違うもの同士の”1”は、一緒に考えてはいけません。下の図では、オレンジの四角と緑の丸は大きさが違いますから、同じ\(\large\sf{\frac{1}{4}}\)でも同じと考えてはいけないのです。
いろんな”1″を見てみましょう。魔法のルール①と式を使います。
リボン\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)本→リボン1本を3つに等分したものが2個分です。
1÷3×2(本)
チョコレート\(\large\sf{\frac{5}{6}}\)枚→チョコレート1枚を6つに等分したもの5個分です。
1÷6×5(枚)
ペンキ\(\large\sf{\frac{3}{5}}\)缶→ペンキ1缶を5等分したものが3個分です。
1÷5×3(缶)
この「1本」、「1枚」、「1缶」が具体的な数字になっても同じです。
リボン1本が3mとすると、\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)本とは1本つまり3mを3等分したものが2個分です。1のところを3mとおきかえて、3m÷3×2=2m
チョコレート1枚が60gだったとすると、\(\large\sf{\frac{5}{6}}\)枚とは、1枚つまり60gを6等分したものが5個分です。1のところを60gとおきかえて、60g÷6×5g=50g
ペンキ1缶が1000mLだったとすると、\(\large\sf{\frac{3}{5}}\)缶とは、1缶つまり1000mLを5等分したものが3個分です。1のところを1000mLとおきかえて、1000mL÷5×3=600mL
分数の大きさを比べる
分母の同じ分数の大きさは、分子の大きさを比べればわかります。
\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)と\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)と比べると、
\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)は1つの円を3等分したものが1個、\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)は3等分したものが2個ですから、もちろん2個の\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)の方が大きいことがわかるわけです。(左の緑の円)
分母の違う分数は、分子をくらべただけでは大きさがわかりません。
\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)と\(\large\sf{\frac{3}{5}}\)を比べてみましょう。(右のオレンジの円)
実際はオレンジの図のように\(\large\sf{\frac{2}{3}}\)の方が大きいのですが、分子を比べただけではわかりません。
分母が違うときの大きさの比べ方は小学4年生の通分のところで勉強しましょう。
分母が同じ分数のたし算と引き算
\(\large\sf{\frac{1}{5}}\)のピザと\(\large\sf{\frac{2}{5}}\)のピザを足してみましょう。
これは、さきほどの魔法のルール①でいうと、
1枚を5等分にしたものが1個、と1枚を5等分にしたものが2個です。
図で見てみましょう。
1枚を5等分したものが3個になりましたね。
つまり、\(\large\sf{\frac{1+2}{5}}\)=\(\large\sf{\frac{3}{5}}\)です。
分母が同じ(今の場合5)分数どうしを足すときは、分子どうしを足せばいいのです。
ひき算も同じです。分子の事だけを考えればいいのです。
分数のおもしろルール① 1になる分数
今度は\(\large\sf{\frac{2}{5}}\)のピザと\(\large\sf{\frac{3}{5}}\)のピザを足してみましょう。
分母が同じ分数のたし算ですから、\(\large\sf{\frac{2+3}{5}}\)=\(\large\sf{\frac{5}{5}}\)です。
図を見て見ましょう。\(\large\sf{\frac{5}{5}}\)はつまり1枚のピザと同じですね。
分母と分子が同じ数の分数は、1と同じです。
魔法のルール①で考えると、1つのものを□等分したものが□個あるのだから、1になるのは当然ですね。どんな大きな分母や分子の数でも同じです。\(\large\sf{\frac{23}{23}}\)も\(\large\sf{\frac{1357}{1357}}\)も\(\large\sf{\frac{100000}{100000}}\)…も1です。このルールは、4年生で習う帯(たい)分数、仮(か)分数で役立ちます。
【練習】
次の分数のたし算と引き算をしましょう。整数になるものは整数で答えましょう。
(1) \(\large\sf{\frac{1}{4}}\)+\(\large\sf{\frac{2}{4}}\)=
(2) \(\large\sf{\frac{1}{8}}\)+\(\large\sf{\frac{3}{8}}\)=
(3) \(\large\sf{\frac{5}{6}}\)-\(\large\sf{\frac{1}{6}}\)=
(4) \(\large\sf{\frac{4}{7}}\)-\(\large\sf{\frac{2}{7}}\)=
(5) \(\large\sf{\frac{2}{3}}\)+\(\large\sf{\frac{1}{3}}\)=
(6) \(\large\sf{\frac{1}{5}}\)+\(\large\sf{\frac{4}{5}}\)=
【答え】
(1) \(\large\sf{\frac{3}{4}}\) (2) \(\large\sf{\frac{4}{8}}\) (3) \(\large\sf{\frac{4}{6}}\) (4) \(\large\sf{\frac{2}{7}}\) (5) 1 (6) 1
まとめ
分数は説明の仕方が変わると混乱してモヤモヤ脳になりやすいもの。「ルール」という言葉を使うだけでも頭の中の整理がつきやすくなります。ルールだけを理解すれば、分数で怖いものはなくなる、これが分数の魔法です。
子供たちの成長のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。